和賀大乗神楽 戸草長根(狂言)@第16回慶昌寺公演
さて、本日は第16回慶昌寺公演から戸草長根(とくさながね)についてです。
この戸草長根はいわゆる狂言(道化)の演目です。
大乗神楽の狂言には上狂言と下狂言があるということです。
上狂言というのは旦那とサンパ(冠者)との掛け合いで演ずるものをいい、旦那狂言とも呼ぶ。
下狂言というのは芸の入る狂言と呼ぶということのようです。
そのうちのひとつがこの戸草長根ですが、戸草長根とは何か?ということについて若干私見を述べる。
和賀地方で創作された狂言台本と思われる戸草長根は「地名」を指すのではないか。
その土地というのは現在の奥州市前沢区と衣川区の間にある急坂=徳沢坂のことではないか。
神楽の中で、「江戸へ使いを命じた者が、早々戻ってきた」という所にヒントが有る。
和賀地方からそう遠く無い所ということから推測して、衣川の徳沢と前沢の長根の間に屹立する「砥草長根」のことであろうと。
南部神楽の高山掃部長者の台本の中にも、九州から連れてきた佐用姫が衣川から胆沢地方に入る節のセリフがある。
佐用姫「音に聞く 十草長根と申せども 今来てみれば 一草もなし」
義実「應 いかに姫君よ、これより胆沢と申すなり・・・」
さらに、天明年間に胆沢地方を徘徊した菅江真澄が「かすむ駒形」の中で「徳沢長根の雪で崖になっているところに小松が群れ立っているのは・・・」と記述している。
古くから街道の難所として知られた戸草長根は、この狂言のように胡麻の蠅が出没する迷所であったのかもしれない。
閑話休題
ともあれ、この演目は暫く途絶えていたものを、今回復活上演したものということです。
和賀大乗神楽さんの演目復活にかける熱意に拍手です。
さて、物語は盛岡の大橋越衛門が江戸に奉公しているが、お金、呉服が底をつき、故郷の母親の元へ使いをよこした。
母親は自分のかわりに家来(冠者)にお金と呉服を託して出立させる。
途中、この母親は観衆と掛け合いをするが、たまたま慶昌寺の和尚さんに「お寺で神楽とはいかに」と問うと、すかさず和尚さんは大乗仏教の法話を説いて見せました。得した気分でした。
冠者が戸草長根に差し掛かると、待ってましたとばかりに胡麻の蠅が冠者を騙しにかかります。
冠者が何を聞いても「知っておる、知っておる」といいながら、冠者の叔父の兵兵衛であるかのように答え、お金と呉服を騙し取ります。
思ったよりも早く帰ってきた冠者に母親は怪しんで聞いてみると、胡麻の蠅に騙されたことに気が付きます。
そこで、「胡麻の蠅からさっさと取り返して来い!」とけしかけます。
今度は冠者と母親が戸草長根の胡麻の蠅を尋ねていきます。
気丈な母親が胡麻の蠅を捕まえて「早く縄で抑えろ」と冠者をせきたてますが、
冠者は藁を打ち始めます。
正に「泥縄」です。 というオチがついたところで幕入りです。
場内も大爆笑で大成功の狂言一幕でした。
動画でどうぞ。
ちなみに、砥草長根はここです。
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