神友楽「お山掛け」@2023風の沢ミュージアムオープニング
さて本日は、2023年4月22日に宮城県栗原市片子沢にあります「風の沢ミュージアム」にて行われた2023年度企画展浅野友理子展「つづり思考」のオープニングセレモニーでの神楽上演についてです。上演したのは南部神楽ユニットの神友楽です。
ここ「風の沢ミュージアム」は、万葉祭で度々訪問していますが、古民家を改装して栗原で文化芸術の拠点となるべく活動している私的施設です。
さて、神楽は神友楽というユニットによる上演。
この神友楽という団体(神楽ユニット)について
「神友楽は、宮城県栗原市内の中野神楽、栗原神楽、城生野神楽、川北神楽の若い担い手が流儀の壁を越えて集まり活動している団体です。神楽衆の高齢化や後継者不足により存続の危機にある南部神楽ですが、新たな魅力の発見や、これまで受け継がれてきた価値を後世に残すことを目的に、積極的な活動を行っています。」
ということです。会長は中野神楽の佐藤高広さんです。
さて、お山掛けに先んじて建元が荒神さんに拝礼して始まりました。
このお山掛けは演目というよりも、所謂神前での祈祷舞のようです。
そして、この演目は城生野神楽系の団体のみが伝承しているというものです。
上演形態としては、神社例祭に招かれた際に神前で行う上げ神楽で、舞役が祈祷文を謳い上げて諸願成就を祈祷するものです。
舞役は、この日は通称翁と呼ばれる月読命でしたが、神社の祭神等によっては天照大御神であったり、素戔嗚尊であったりするとのことです。
南部神楽の神降ろし舞と同様に、このお山掛けでも最初は舞手は面を掛けずに額づき、掛け歌が終わると面をtけて神となる。
このことは他の南部神楽の神降ろし(翁舞)でも同様の作法として見て取れる。南部神楽が神事芸能を引き継いていることの証左である。
この日の起請文は風の沢ミュージアムのイベントオープニング祝いということで、無事に開催されることと、併せて栗原の人々や、この日参集した皆さんの疫病退散と五穀豊穣等を願う内容でした。
お山掛けの神歌の最後に「下山をつかまつる」とありますとおり、このお山掛けが終わって山を降り、初めて他の神楽演目ができるということと解します。
実際、神社での神楽上演では、多くの神社本殿は小高い山の上にあるため神楽衆が登って行き、そこで神事の中でお山掛けを行うことになる。そして、その後に山から降りて麓の神楽殿あるいは掛け舞台で仕組み神楽が行われるという構成になっている。
これは、南部神楽が山伏神楽の影響を色濃く残しつつも独自の解釈により発展してきたことを示す証左で、それが現在も連綿と継承されていることに価値を見いだせると思う。
なので、南部神楽を単なる娯楽芸能とする位置づけは一刻も早く改めてほしいと願う。
動画でどうぞ
