嶽流石鳩岡神楽「機織の舞」@2006石鳩岡観音堂神楽殿
さて本日は、平成18年8月10日に花巻市東和町の石鳩岡観音堂神楽殿において行われた神楽奉納から機織の舞です。
これは山伏神楽の中でも年寿、蕨折、鐘巻などと並んで女舞の執念ものです。
能で言えば砧に対応する内容で、ストーリー仕立ても複式夢幻能の形を採っています。
物語は、若狭の国に機織りの上手な女がいて、毎日機を織り、天気の良い日は日に百疋、曇の日は五十疋の絹を織っていた。
ある日、その夫が都に出て三年三月戻らなかった。
その間に機織り女の近所に住む長者が横恋慕し、里の怪しき者をして夫は都で女と暮らすようになりもう戻らないそうだと告げさせる。
それに逆上した機織り女は自ら機織機械を打ち壊して若狭が浦に身を投げる。
それから七日後に夫は里に戻ったが、妻の惨事を聞きつけて、自らの髷を切って僧になり女の菩提を弔うが、機織り女は亡霊となって現れ、地獄の様を機織りに擬して演ずるというものである。
胴前の拍子も女舞の特徴であるトントトトンです
幕出しは
〽 来春の東の空の末までも、思い立ちゆく旅衣、浦山かけて はるばると 若狭の浦にと着きにけり
「色づくしの機道具を、づだづだに切りむりむさんとささげつつ、かの池に臨みける。
遂に機織りは池のみにぞなると聞く、夢の如くに失せにける。」
機織りが幕に隠れると、次に若人面に機織道具を肩に掛けたわっぱが出てきて、幕内で物語の舎文がかかる
〽 只今の女をばいかなる女と思し召すのお ・・・・
わっぱが幕に入ると、機織り女が脱ぎ垂れに長采を振り乱した亡霊の姿となって現れます。
続いて平服の舞手が出て、機竿を女の前に水平に差し出して機織り機械の様をします。
ここからが機織り女の執念の凄まじさがおどろおどろしいまでに表現される場面となります。
〽 天の川に 年一度、逢瀬の契り、そめかへも愚かなり、瑠璃や珊瑚の機道具を、機織れ機織れとせむる声は小松の音もおそろしい、思いは積もりて山となる、涙つもって淵となる・・・
と頭の長采の上に乗せていた采を手に取る、すると顔がもとの女の顔に戻り、妄執が解けて穏やかになった様子を表しているように見える。
〽 有り難や 御僧の功力によって罪業懺悔の姿とあらわれたり とて幕内に消える
恋慕の怨念にかられた女のもの苦しさ表現した一幕です。
この神楽のもとになったであろう能の砧について、作者の世阿弥自身が「後世の人はこの能の味わいがわからないだろう」と述べたほどの自信作という。
隣の観音堂では少年たちも熱心に神楽を見ていました。これもまたいい風景だ。
動画でどうぞ
