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2018.01.18 | Comments(3) | Trackback(0) | カテゴリ祭り

吉浜のスネカ 小正月の来訪神

さて本日は三陸浜の小正月行事です。
岩手県沿岸部には小正月の来訪神として、1月15日の夜に異形の面や蓑ケラを着た年男が集落の家々を廻り、泣き虫の子どもやカバネヤミ(怠け者)の嫁を戒めて歩く行事が分布しています。

秋田のナマハゲ、山形のアマハゲ等とともに国の重要無形民俗文化財に指定されていて、全国に伝わる「来訪神行事」は、ユネスコの無形文化遺産登録を目指していて、今年11月ごろに登録の可否が審議されるという。

それはさておき、ここ三陸町吉浜のスネカの現在の姿をリポートしていきます。

従来は年男が扮して行ってたが、一時中断した後に青年会行事として再開し今日に至る。
吉浜拠点センターに青年達と中学生が集まり、ここの2階に保管されている装束を身に着けて支度します。
この日は午後5時に出発式を行い、吉浜の各地区を12班に分かれて午後8時くらいまでかけて廻るということでした。



スネカの背中には米俵を背負ってます。
これには五穀豊穣の意味もありますがもう一つワケがあります。
米俵の隙間から子どもの靴が出ていますが、これは中に子どもが入っているぞということらしいです。
つまり、「(親の)言うこと聞かねワラスは、山サチェデグゾ(連れて行くぞ)!」ということです。
これ見たら子どもたちは恐怖のドン底に落とされるというものです。
ちなみに、昔は俵に大根を刺して、子どもの足にみたてていたそうです。

IMG_0342.jpg

集落を廻るのは、子供会の小学生。
12チームに分かれて本郷、扇洞、根白、千歳地区を廻る中学生。
それと、大人スネカが2人、マスコミ対応の家や頼まれて来訪する家々を軽トラックの荷台に乗って廻るという感じです。
大人の部1軒目は、新聞報道対応の家。
とはいえ子どもたちはいつもと違う雰囲気を察して逃げ回っています。
そこをだましだまし居間のこたつへと集合させて来訪神を待ちます。

小正月のお祝いらしくミズキ飾りやテーブルの上のご馳走のある居間の景色がよい雰囲気を出しています。
ここに居られただけでも浜の小正月行事を味わった気分。

さて、約束通りガラス戸を叩いて「春来る鬼」が現れます。
「泣ぐワラスはいねが! 夜は早ぐ寝るが!」
子どもたちは「いい子にします」と必死に誓いの返事をしますが、まわりで見ている大人たちはニヤニヤと楽しんでいます。
最後はスネカにご祝儀が渡されてお帰りいただきます。

S1390007.jpg

吉浜のスネカは200年以上前から行われているということでしたが、岩手県内では久慈地方のナモメタクリ、野田・普代のナモミ、山田・大槌のナゴミ、大船渡市日頃市のヒガタタクリ、崎浜のタラジガネ等が伝えられています。

それらのお面も各種多様ですが、吉浜のスネカでは木の瘤で作った馬面の面を使っていたということですが、確かに鬼の面というより「得体の知れないもの」の顔をしています。
浜ならではの異国の雰囲気もありますが、やはり大海を行き来していた船人はいろいろな物を見てきたのだろうと推察します。

子どもの健やかで心正しい人間への成長を祈った素朴な民俗行事ですが、やはり少子高齢化の影響があります。
またバックボーンとして活躍していた中学生も、間もなく地元中学校が統廃合となります。
これからの伝統行事のあり方も難しくなることと思いますが、そこに家族がいる限り続いていくような気がしました。

来年は、1月16日に行われる根白の権現様と千歳の大漁唄い込みを見にいきたいと思います。

S1390047.jpg

動画でどうぞ。

テーマ:伝統芸能 - ジャンル:学問・文化・芸術

2018.01.18 |

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Author:祭りの追っかけ
祭・・・それは祈り、畏れ、そして縋り付くばかりの信仰、神人共生の歓びの象徴。さて、明日のエネルギーの糧を求めに彷徨おう。

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