歌書神楽 潮汲み舞 @江刺民俗芸能フェスティバル2017
さて本日は、江刺民俗芸能フェスティバル2017から、歌書神楽さんで潮汲み舞です。
歌書神楽さんの由来について
「嘉永5年(1852)1月に、土沢村(現花巻市東和町土沢)より巻物伝授。以来現八代目まで続く」とあります。
大償神楽から土沢神楽に伝承されたのが天保年間と推測されますので、ほぼ直後に歌書に伝えられたようです。
尚、翌嘉永6年には同じ土沢神楽神楽から稲瀬の佐野向に伝承されているので、伝播状況がよくわかります。
現在の代表は菅野珷逸さんです。
潮汲み舞は神楽能のひとつとされています。
女舞ではあるものの、執着ものとも少し違い、元々は能から出たものとも猿楽の類からのものとも諸説あるようです。
能には松風という演目があり、須磨の浜辺に棲む松風と村雨という海人の姉妹が、在原行平に恋するが成就せず亡くなったが、後に旅の客僧の前に亡霊となって現れ、幻想的に汐汲みするという場面があります。
みちのくの山伏神楽では、その曲を取り入れて美しくも狂おしい若女の舞に仕上げています。
幕だし歌 〽 松島や 松島や 小島が浜の月をだに 影を汲むこそ心あり
若女面を付け、肩には棹に赤い帯を巻き、その先には手桶に擬した烏帽子を両側に提げて浜辺に潮汲みに来た様を表します。
一舞の後、楽屋から舎文がかかります
〽 松の村立つ霞む日も 賤が潮路を運びしが
潮路や遠くなるみかた これも鳴尾の松影に
月こそ沢に社やのただ今立ち居出て汐汲むことの嬉しさよ
憂き身ぞ世と人には誰か 次のくし差し来る汐を汲み上げて
見れば月こそ桶にあり 嬉しや月は桶にあり
で、物狂おしく桶に汐を汲む所作になる
拍子が早くなると天秤と桶を激しく振った後に幕にしまって扇を開いて舞い納めます
煌々と輝く月に、恋慕の情を寄せた在原行平の面影を見たのか、手桶に汐を汲むたびに水に映る月に行平と再会したような気がしたのかもしれない。
となると、いつの間にか執念ものとしての演目なのだという感じに引き込まれてしまいます。
苧環や機織ほどのオドロオドロしさはないものの、物悲しさの中にも美しい浜辺の情景が浮かぶ秀作です。
動画でどうぞ。
