和賀大乗神楽 伏獅子 @第17回慶昌寺公演
さて本日は和賀町煤孫の慶昌寺での和賀大乗神楽公演の最後の演目、「伏獅子」についてです。
伏獅子とは通常の権現舞の中に、祈祷の所作として権現の幕を広げて獅子頭を低く構え、諸悪を飲み込んで祓い清める構成が入ったものをいう。
前半部分は通常の権現舞なので、数珠を持って祈祷しながら四方を踏む下舞が舞われます。
次に下舞をした者が権現頭を掲げ、尻尾の方はもう一人が付き権現舞をします。
大乗神楽は、宮城県の箟岳箟峯寺(涌谷町)から法印神楽が伝承されたということになっています。
しかしながら、陸前浜の法印神楽にはいわゆる権現舞はありません。
異伝の法印神楽(薬莱神楽等)には、別して獅子舞がありますが、旧南部藩領内の早池峰系の権現舞とは異なります。
和賀町教育委員会刊行の「和賀大乗神楽」にはこうあります。
「熊野大権現の三拍子、五拍子、七拍子の三種類あって、その中の七拍子神楽である。
権現の伏獅子には竜王を現し、諸神諸仏の願力により後生安楽と舞い、八大竜王の加護を祈り、
悪魔降伏、家中の霊気を祓い厄病を消除する。
使用したる扇、刀等は末広く家運繁盛と財宝を表示し、これを清めたる舞なり」
早池峰系の権現舞の幕とは異なり、鱗紋が入っていて竜王を示しています。
さらに、獅子頭の頭頂にはシャグマのように皿がついていて、神の化身の権現とは少し違いがあります。
これはやはり、修験者が関わった証左といえるかもしれません。
獅子が一舞した後に、伏獅子になるため、権現様の幕を大きく広げます。
そこに獅子あやし役の修験者が権現様に扇や刀等を咬ませる祈祷を行います。
これは、獅子の体内に入ったものが、浄化されて外に吐出されるという呪法を体現しています。
また、恰も権現様の効験によってものごとが再生されるという修験道の教義を民衆に分り易く説明するがごとく舞をもって表現されています。
そして権現様の体内から袋を取り出し、その袋に入っていたお菓子を会場に撒いていました。正に山伏の効験を表しているかの如くでした。
最後は嬰児(胎内くぐり)です。
多くの観客の皆さんが頭齧りに列をなしました。
皆さんの健康と安寧を祈ります。
動画でどうぞ。
