牛博de民俗芸能・・・動物たち?
さて、本日は奥州市前沢区にあります奥州市牛の博物館で開催されております「民俗芸能の動物たち」という企画展の宣伝です。
詳しくは、牛の博物館公式HPを御覧ください ⇒http://www.isop.ne.jp/atrui/mhaku.html
牛の博物館は、合併以前の旧前沢町時代に「前沢牛」を全国に轟かせたことから「牛」をテーマにした全国的にも珍しい博物館です。牛に関する古今東西の文物が蒐集されており、最近は厩猿に関する研究も進めていて民俗学的にも重要度を増しています。
そんな牛の博物館ですが、この度学芸員の森本さんが孤軍奮闘して胆沢地方の民俗芸能の装束等から動物をモチーフにした物をピックアップして検証しようという興味深い展示を企画しました。(大拍手!)
胆沢・江刺地方は、伊達・南部藩領の境目であるとともに沿岸部との交易や北上川の水運を通して様々な文化のクロスポイントでもあります。
そのため、同じ系統の民俗芸能でも多様な芸態が見られるとともに、装束もまた多彩です。
今回の企画展では、その点にも着目し、比較民俗学的な視点で陳列してあるのが特徴です。
これは、できうることなら奥州市内の何処かの施設に常設して欲しいと願います。
民俗学や民俗芸能研究にとってはとても貴重な財産です!
と熱く語ったところで展示を見てみます。
最初にあるのは江刺区内の早池峰系山伏神楽団体の鳥兜です。
胆沢江刺地方は神楽の坩堝で、山伏神楽系や法印神楽系とその両方から影響を受けた南部神楽が併存しています。
ですので、鳥兜ひとつとってしても各々特徴がありますが、今回は山伏神楽系の鳥兜が展示してありました。
鳥兜の意匠は直接手書きのものが多いのですが、これらは押し絵で描かれています。
次は太鼓系鹿踊の装束です。
左から行山流、金津流と右端は行山流でも異端的な特徴がある行山流久田鹿踊のものです。
頭から背中に掛けているのは「流し」という装束ですが、武者絵であったり六字名号であったり、華鬘結びが有ったり無かったりと多彩です。
鹿踊ですので春日大社に因んで鹿や紅葉が描かれていることも多いですね。
続いては獅子舞です。
左から、瀬台野神楽の悪魔祓いの獅子、黒田助の獅子舞、江刺区梁川の中田太神楽の獅子舞です。
今回は、山伏神楽系の権現様は展示されませんでしたが、獅子舞も様々なバリエーションがあります。
瀬台野神楽の悪魔祓いでは小正月に猿田彦を先頭に刀祓いと獅子舞が部落内の家々を門付けして獅子舞で悪魔を祓い、家内安全の札を配る行事がありました。この際に使われる獅子頭は明治初頭のものです。
黒田助の獅子舞も瀬台野とほぼ同様で、獅子に対して厄を祓う太刀切りという役が付く羽黒修験の影響を受けたと思われる形態が伝承されています。
それから、この神楽面は私も初見ですが、奥州市前沢区にある旧五代院所蔵の神楽面です。
実はこれらの神楽面は奥州市では最古かもしれないのですが、この神社に付属する神楽がとうの昔に消滅しているため、この神楽面の存在すら適用外となっていたものです。
あの橋本先生が急急如律令でこれを調べよと言ったことを思い出しますが。その後奥州市教育委員会はどうしたのでしょうか?
この面は明らかに法印神楽の神楽面なのですが、奥州市教育委員会文化財担当のご精励を望む!
場所はここです。
