南部笹流大平神楽 朝視ずの里の場@第37回志波姫神楽鑑賞会
さて本日は、南部笹流大平神楽さんの朝視ずの里の場についてです。
演目の朝見ずの宿とは、美濃と近江の国の境で、とある宿に入った客が次の朝に出て行く姿が見えないといった噂から名付けられた宿で、つまりは宿泊客が夜盗に襲われる宿ということらしい。
またの題名を道行などとも称する。
大平神楽さんでは、幕出し歌がかかります。
劇舞ではありますが、伝統的な幕出し歌を掛けるところに思い入れを感じます。
〽 センヤーハー 義経がホー 朝見ずの里へと 急ぐヨーホー
冒頭に義経と女御が渡り拍子で舞出て、早御神楽で鮮やかに舞います。
さて、京から奥州平泉へ向けて旅をしていた義経が田島の里の一軒家に宿を乞うことから話が始まります。
しかしながら、宿の女御は「只今は主人が留守のためお泊めすることができません」とにべもなく断ります。
ここで義経の口説きとなります。
〽 この世に三首の例えあり
竹にからまりし朝顔の花でさえ 蝶々に一夜の 宿を貸す
水に浮き出す 浮き草も 蛍に一夜の 宿を貸す
また 駒に踏まれる芝草でさえ 夜露に一夜の宿を貸す
それでも宿を貸さぬとは あまりあまりに情けなや~
横道にそれますが、この歌には遠く離れた下関に伝わる下関音頭の引接寺くどきに同様のものがあります。
平家武将の鎮魂のために下関郷で唄い踊られたものが、やがて北前船に乗って全国に広まったと言われています。
「水に浮いたる浮き草も水に便りはなけれども 蛍に一夜の宿を貸す 駒に踏まれし道芝も 駒に便りはなけれども 露に一夜の情けあり」
閑話休題!
そこへ夫が帰ってきます。
奥の部屋に人の気配がするがどうしたことかと女房に詰め寄ります。
高貴なる若君とあらば金品を巻き上げようぞと義経の部屋に討ち入ります。
義経のただならぬ気配を察した盗賊は自らの本名を名乗ります。
自らは伊勢三郎義盛と申します、これよりは義経殿の配下となり奥州平泉までお供いたします。
めでたく渡り拍子で舞納めます。
動画でどうぞ。
