横町神代神楽 @酒田民俗芸能公演会
さて、本日は第46回酒田民俗芸能公演会から横町神代神楽nの刀くぐりについてです。
この神楽は遊佐町吹浦地区の横町に伝承されていますが、その芸態は正に岩手県南宮城県北の南部神楽そのものです。
由来を調べても詳細な伝承はないらしく、幕末から明治期にかけて仙台方面から蕨岡の上寺に伝えられたのが近隣の集落に伝播したもののようです。
しかしながら、神楽組の中には江戸中期以来の伝承を伺わせる面等がのこっていたりする。あるいは比山番楽等の影響を受けた神楽が先にあり、明治初期に仙台神楽(セリフ神楽)がこの地にもたらされたのが実態ではなかろうか。
酒田市の神代神楽という範疇の神楽で本流とされているのが本楯神代神楽で、その上組が保持する伝書「神代神楽詞言(じんだいかぐらじごと)」(大正4年書)には次の演目が記されているという。
・伊佐那岐尊(前幕)(後幕) ・素戔嗚尊 ・阿倍安那 ・四柱神 ・岩戸開 ・八幡太郎義家 ・住朝の神楽 ・頼光の神楽
・彦火火出見命(前幕)(後幕)
と、神舞から仕組舞まで南部神楽に相応する演目であることが判る。
さて、横町神代神楽も伝来は不明となっているが吹浦地区に伝承されているということが興味深い。この地区には延年舞楽に太神楽系の獅子舞もある訳ですから、やはり明治期になって娯楽性を求めて、華やかで動きの激しい仙台神楽といわれる神楽が導入されたと見たほうがよいかもしれません。
囃子方は、締太鼓に摺鉦(ジャンガラと呼ばれている)、それに笛がつきます。
囃子の調子は、福島県周辺の神楽に似ている感じがします。あるいは、初期の南部神楽の奏楽を留めているのかもしれません。
刀くぐりという演目ですが、登場人物は牛若丸と鞍馬山の勝常坊、それから何故か熊坂丁半(ママ)です。
南部神楽の演目でいうところの鞍馬山と東下り鏡ヶ宿と三剣舞が合体したようなかんじでしょうか。
〽 牛若丸これなり 熊坂丁半いでて勝負勝負
熊坂丁半が出てきます。右手に扇、左手に幣束を持っています。
両人抜刀して戦いになります。
そこへ勝常坊が現れ、刀を収めよと仲裁に入ります。
〽 千代の御神楽 千代の御神楽
ということで、面をとって刀くぐりとなります。
ザイの付け方に特徴があります。
三人で互いに刀を持っての荒事になりますが、この間のお囃子はどこかで聞いたことのあるような郷愁を誘うような感じです。
それにしても立派な神楽幕だ。
動画でどうぞ。
