女たちの蘇民祭
女たちの蘇民祭 ~神に託す肉親の帰還~
こういう見出しの新聞記事が7月28日付け岩手日日新聞に掲載された。
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岩手県内には幾つかの蘇民祭が現在も継承されているが、その中の一つ奥州市江刺区伊手地区に鎮座する熊野神社における蘇民祭も1000年以上の歴史を持つという。
凍てつく冬に腰帯一つで炎の上がる柴燈木の上に上がって気勢を上げ、また蘇民袋の争奪では荒々しい戦いが繰り広げられるとあって、祭りへの参加は女人禁制となっていた。
(画像はすべて2003年の祭りのスナップです)
その掟が唯一曲げられて、女性も参加した時期がある。
太平洋戦争中は、東北の山村の若者も沢山戦地へ召集された。
後に残された、母親や妻たちは男たちの武運長久と無事帰還を願って祭りに参加したという。
もっとも、祭りの担い手である男たちが多く戦場に取られていたため、女性の参加が必然といえたのかもしれない。
蘇民祭とは文字通り蘇民将来伝説に基づく祭りであるので、祭神は素戔嗚尊であり古くは武塔神である。
その強力な神通力をもって夫や息子を守護してほしいとの切実な願いが祭りに込められたという。
当時の祭りを知る熊野神社蘇民祭保存会名誉会長の伊藤さんはいう。「昭和10年ごろから年々祭りの参加者が増えていった。当時、出征兵士の年齢数の角灯をともして祭りに参詣すると、より御利益が得られると信じられていた。」とういことで、今では想像もつかないほどの多くの人で賑わっていたということである。
災害も戦争も、時とともに記憶が薄らいでいくようだが、祭りにこめられた思いは祭りを通して継承され続けている。
そう思いたい。
