和賀大乗神楽 蕨折り @ 第14回慶昌寺神楽公演
さて、本日は和賀大乗神楽さんが昭和54年以来実に36年ぶりに上演した蕨折についてです。
今回の慶昌寺公演では鐘巻・蕨折・帝帝と大乗神楽の女舞を三演目を揃えたという豪華版でしたが、これが来たる6月8日の大乗神楽大会へと結びつくような勢いとなっています。つまり演じられなくなってきた演目の復活です。
蕨折の内容は、年老いた両親に孝行娘が山へ蕨採りに出かけるが帰り道で春先の増水した川を渡ることができず、川辺に居た翁に一夜妻となることを条件に船渡しを頼む。がしかし、川を渡り終えると3日の暇乞いをして戻っては来なかった。
一人嘆いている翁の前を樵が通りかかり、翁が娘の行方を尋ねたところ樵は「その娘なら都で玉の輿に乗って暮している、それゆえ翁に問われたら縁がなかったと諦め下さいと言付けを頼まれた」と答えます。
哀れ悲嘆にくれた翁は「それが真の話でなかったら悪鬼に化けて樵を憑き殺す」といって化身します。
この話は実に二重構造になっていて、娘に懸想する翁の執着物と悪鬼になって己の身の上を嘆く夢幻能の形をもとっている。
この日の女舞は名人高橋はるおさんです。
この演目は本田安次著「山伏神楽・番楽」によれば、「即ちこの戯曲が粉本とした説話は、かの能狂言の「枕物狂」に「柿の本の紀僧正は、染殿の后を戀いかね、加茂の御手洗川に身を投げて、青き鬼となり給う」であり、それともう一段古いものによったらしく、今昔物語巻第二十、第七「染殿后為天狗披繞乱語」に出てるように思う」
とあり、古典から様々な芸能に取り入れられたと比定している。
神楽においても、山伏神楽・番楽そして南部神楽でも上演されているほど人気の高い演目であったということである。
南部神楽ではこの演目の題名は税王あるいは勢王と付けられていて、ここの大乗神楽では是老と記されているが、これは翁の「尉」からきていると思われる。
翁が娘を舟に乗せて川を渡り、いそいそと自分の家へと誘う場面
そして何よりも、蕨折の人気を絶大なものにしている理由は、この間の狂言である。
道化役の樵(根っこ切り)と胴取との軽妙なやりとりが面白可笑しく、まさに道化神楽の真骨頂といえる。
この日も、道化役は台本通りの狂言を喋るわけであるが、聞いている観衆には何のことかわからない言葉もあった。
道化役が「今の言葉わがりすたか?」と場内に聞いている場面もあったが、なるほど昔の台本のセリフは現代人には通用しなくなってきている、かと言って現代語だけで喋っても味わいが薄れる、難しい問題だ。
さて、そんなうちに翁が途方に暮れて幕に入ると、悪鬼に化身して再び現れる。
道化は道者となって悪鬼を折伏し、印を結んで幕に入る。
動画でどうぞ。
