石鳩岡神楽 機織りの舞 @ 石鳩岡神楽交流会
そういう訳で本日は石鳩岡神楽さんの機織り舞です。
これは山伏神楽の中でも年寿、蕨折、鐘巻などと並んで女舞の執念ものです。
能で言えば砧に対応する内容で、ストーリー仕立ても複式夢幻能の形を採っています。
ところで、この機織りという演目は舎文が長いのと舞が難しいことから上演機会が少ない。
私が初めて機織り舞を見たのは平成18年の夏のこと石鳩岡観音堂例大祭で神楽殿での上演であった。
幽玄な中にも鬼気迫る舞に神楽の奥深い面を見た思いがしたものです。
物語は、若狭の国に機織りの上手な女がいて、毎日機を織り、天気の良い日は日に百疋、曇の日は五十疋の絹を織っていた。
ある日、その夫が都に出て三年三月戻らなかった。
その間に機織り女の近所に住む長者が横恋慕し、里の怪しき者をして夫は都で女と暮らすようになりもう戻らないそうだと告げさせる。
それに逆上した機織り女は自ら機織機械を打ち壊して若狭が浦に身を投げる。
それから七日後に夫は里に戻ったが、妻の惨事を聞きつけて、自らの髷を切って僧になり女の菩提を弔うが、機織り女は亡霊となって現れ、地獄の様を機織りに擬して演ずるというものである。
胴前の拍子も女舞の特徴であるトントトトンです
幕出しは
〽 来春の東の空の末までも、思い立ちゆく旅衣、浦山かけて はるばると 若狭の浦にと着きにけり
「色づくしの機道具を、づだづだに切りむりむさんとささげつつ、かの池に臨みける。
遂に機織りは池のみにぞなると聞く、夢の如くに失せにける。」
機織りが幕に隠れると、次に若人面に機織道具を肩に掛けたわっぱが出てきて、幕内で物語の舎文がかかる
〽 只今の女をばいかなる女と思し召すのお ・・・・
わっぱが幕に入ると、機織り女が脱ぎ垂れに長采を振り乱した亡霊の姿となって現れます。
続いて平服の舞手が出て、機竿を女の前に水平に差し出して機織り機械の様をします。
ここからが機織り女の執念の凄まじさがおどろおどろしいまでに表現される場面となります。
〽 天の川に 年一度、逢瀬の契り、そめかへも愚かなり、瑠璃や珊瑚の機道具を、機織れ機織れとせむる声は小松の音もおそろしい、思いは積もりて山となる、涙つもって淵となる・・・
〽 有り難や有り難や 御僧の功力によって罪業懺悔の姿と現れたり
と頭の長采の上に乗せていた采を手に取る、すると顔がもとの女の顔に戻り、妄執が解けて穏やかになった様子を表しているように見える。
動画でどうぞ。
