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2013.05.13 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ神楽

大室南部神楽保存会_ 岩戸入り

宮城県石巻市北上町十三浜に伝承される南部神楽の復活祭について

東日本大震災での大津波により、大室の集落は壊滅状態となり、神楽の衣装や道具類全てが流失した。

そんな中、「こんな時だからこそ、娯楽を。地域に根付いた神楽を。この地で生きてきた人々が、自分たちの生きてきた人生が、次の世代に確かに芽吹いて息づいているのだと。今までしてきたことが決して無駄でなかったと証明してみせようじゃないか。」(大室南部神楽HPより抜粋)
そんな思いで様々な支援や協力を受けながら、自らの手で神楽を復興させ、自らの手で「復活祭」をやってのけた大室地区の皆さんに敬意を表しながら復活祭の模様をリポートしていきます。

まずは、大室南部神楽さんの由来について

ここは宮城県の北東部の陸前浜の只中にあり、周囲には法印神楽が多く伝承されているが、その中で南部神楽を継承している団体が大室南部神楽保存会である。

昨日のブログで一関市藤沢町の下大籠南部神楽保存会について取り上げたが、大室南部神楽保存会はその大籠から指導を受けて結成された縁がある。

大正のはじめ頃に、大室の神楽好きな人たちが岩手県下大籠村(現:一関市)出身の津田清人氏に教えを乞い、伝承された。
津田氏は岩手県から大室地区へ足を運び、佐藤庄吉氏の自宅に数ヶ月間滞在し地域の若者たちへ神楽を伝授した。
という経緯があり、大籠と大室は兄弟神楽というふうに呼んでおりました。


この日の舞台は、共同作業場の大型テントに大籠から運んだ神楽舞台を設置して、十三浜の海が見渡せる風光明媚な景色の中で最高の環境づくりでした。



演目は寄せ太鼓と舞台清めから始まり、震災で亡くなった方々への黙祷に続いて三番叟からでした。
残念ながら間に合わず、私は岩戸入りから鑑賞となりました。

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サルタヒコのミコト 志保さん

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テンショウダイジン 恵さん

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タカミムスビのミコト 梨恵さん

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ツキヨミのミコト 満利さん
みんなカッコ良かったですよ!

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動画でどうぞ



そして、震災後の沈鬱な雰囲気の中でどのようにして神楽をはじめたかについて、大室南部神楽保存会の佐藤満利さんが書いた文章の転載許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。
これは、今回の震災津波により被災した芸能団体すべてにいえることかもしれません。


【復活への想い】大室南部神楽保存会 佐藤満利

今更ですが、書き留めてみようと思いました。
長いので、読まないで下さい。
忘れないように書き留めただけです。

伝統芸能はその地域に伝わるものであり、万人に愛されるかというとそうでもなく、全く知らない方でも楽しめるものもあれば、見どころが分からずつまらなく感じるものもあるでしょう。

普段の営みの中で絶対不可欠かと言えばそうでもなく、全く興味のない方はゴマンといるでしょう。

2011/5/16に、こんな感じのツイートしました。
「相川小学校では相川太鼓という伝統がありました。子供達は太鼓がなくなり、自分達の代で途絶えてしまう事を悲しんでいます。もし可能なら復活に御協力をお願いします。」

このあと“太鼓”でつぶやき検索していると、このツイートを見ただろうどこかの若い子が、
「復興に太鼓だって(笑)」
とのつぶやきを発見してしまいました。
かなり頭にきちゃいましたが、苛立ちを抑え冷静に大人の対応をし、親友“上野”の「よこやりごめん、、、」からのツイートで、この子は解ってくれました。

今思えば、この子の言ってることは間違っていないと思います。報道はいつも同じような映像で、遠くでは現状が分からなかったでしょう。
ましてや地域の伝統何て落ち着いてからやればいいじゃないか、と思うでしょう。

その通りです。当時しなくてはいけないのは、支え合って生きていくこと。「生きる」って事が目の前の事ですから。

しかし、支え合って生きるためにどうしても必要なことがありました。

震災後、報道などで伝えられていない大きな災害は、やはり人間関係の問題であると感じました。
欲、妬み、苛立ち、不安。。。避難所生活が長引くとどうしてもストレスが蓄積され悪いとこばかりが目立つようになっていました。

明るい話題がなく、気持ちに余裕がなくなると人はどうしてか悪口を共通の話題にしてしまうものなんです。
目に余る行動をとる人に、これでもかと言わんばかりに集中攻撃してしまうんです。

こういう大人がいるから、若年層が平気で「イジメ」をしてしまうのです。政治家がメディアを通じて、日本中にさらけだしてしまってますからどうしようもないですけど。
会社だって同じ。教育だといいながら、言葉の暴力、精神的苦痛はいつの時代になってもなくなりゃせんのです。

話が脱線してしまいましたが、要するに生きてるうちは楽しみの一つでもあれば心に余裕が出来ると思ったんです。

特に子供達は、慣れ親しんだ学校も被災してしまい、“仮”の学校で、子供ながらに肩身の狭い思いをしながら通っていたと思います。

季節の行事もままならず、母校の特色も出せず、胸を張って「僕は相川小学校の児童だ!」とはいかないだろうと思います。

そんな子達が、学校存続が絶望的、伝統の太鼓はどうなるの? 父や母の子供の頃からの伝統なのに自分の代でなくなるの? と、不安、悲しみにふけっているのを見て、黙っていられなかったんです。

落ち着いてから?

じゃないと思ったんです。

今だ!って。

落ち着いてないからこそ、子供達が生き生きと、大人たちが喜び、地域が笑顔いっぱいになる。
それが欲しかったんです。

心に余裕を。

でも、この時はこれ以上の行動に移せませんでした。臆病になってしまったんですよね。
「やっぱり早すぎるのか。。。」と。

自分は何もできなかったんですが、皆様のご支援のお蔭で2011/11に相川太鼓は復活することが出来ました。ありがとうございました。

神楽についても同じです。
この事があってから、「時期はいつなのか?」そればかり気になり、行動に移せませんでした。
と同時に、「誰かがやるだろう」「自分は年下だし」
「職業柄、妬みがあるかも…」という消極的な考えしか頭に浮かんできませんでした。

結局、踏み切ったのは当会の会員ではなく、十三浜を支援していた団体の一人、日方さんのお蔭です。感謝しています。

でもね、本当は当会の会員が一番に踏み切るのがスジだろうって思ってました。今でも「情けない」「みっともない」と反省してます。

今こうして、ここまで道具が揃ってきた、復活が見えてきたなんて浮かれてますが、もし、日方さんがいなかったら、まだ手も付けてなかったかもしれません。
集団移転が完了し、落ち着いてからやっと、「さぁやるか」だったかもしれません。
ほんと情けないです。

日方さんがキッカケを作ってくれて、皆でやろうってなった時、身震いしました。
今でも覚えてます。ゾクゾクしてワクワクして
眼もウルウルでした。

皆の記憶を頼りに何がないか(全部ないんですけど)、とりあえず何が必要かを洗い出し、多方面から情報を収集し、バラバラに散らばったメンバーが一つの事に夢中になる。こんなにも楽しい、頼もしいもんなのかって実感し、改めて地元が一番って思わされました。

地元が大好きなんです。

この復活の目的は人それぞれにいろんな想いがあります。
自分は、この復活を通じての一番の目的を、
「地元の皆が一同に集まれる機会を作りたい」と考えています。

ただ、神楽が復活、失った道具を取り戻す、伝統を絶やさない。だけだったら、こんなに夢中になりません。なれません。

地元の皆が、あれ以降集まる場所って、どこか解りますか?

“お通夜”ぐらいなもんなんです。
不謹慎な!と思うかもしれないですけど、本当にそうなんです。
男衆は、たまに地区の寄り合いがあるので、顔を合わせることはあっても、女性人やお年寄りなど、これまで毎日顔を合わせていた人が散り散りになってしまい、久々に会うのはお通夜。

これまた不謹慎ですが、そんな久々の再会をするばあさん達は、お通夜にもかかわらず手を取り合って大喜びしてるんです。

そんなの見てられないですよ。ほんとに。

これ見て、今だからこそ再会できる場所を!
と強く思いました。絶対に!と。

日方さんが我々にくれたキッカケは、地元に足を運ぶキッカケに姿を変え、もう一度地元を振り返ってもらうキッカケになればいいなぁと。

単純に、自分が地元にできる事って、あとは何もないんです。とりえないですから。神楽しかないんです。

逆にいうと、神楽は自分達にしかできないって事でもあります。

ここで絶やすか、こっから盛り立てるか。

もうやる事は一つです。必然です。

やらなくてはいけないじゃないんです。
やっぱりやりたいんですよ。

あくまでも“自分”の想いなのでご了承ください。

なんかすいません。カッコつけちゃって。

でもね、カッコつけて神楽しないと、子供達が僕もやりたいってならないですからね。

もう少しでスタート地点が見えてくる。

前を向いて前進あるのみ!!!

長文ご苦労様でした(^^)♪

テーマ:伝統芸能 - ジャンル:学問・文化・芸術

2013.05.13 |

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Author:祭りの追っかけ
祭・・・それは祈り、畏れ、そして縋り付くばかりの信仰、神人共生の歓びの象徴。さて、明日のエネルギーの糧を求めに彷徨おう。

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