ちょぼくれ(小島願人踊り)
本日は昨日の小島願人踊りの続きです。
というより、本来は小島願人踊りでは六番の伊勢はなと七番の道者願人の間に中入り芸としてちょぼくれが入っているのであり、一連のものであるが、今回は特に「ちょぼくれ」の部分について注目したいがために分けて掲載する。
ちょぼくれ(節)とは、関西ではチョンガレと呼ばれている。
チョンガレ節は一般に浪花節の前身とみられて、説教祭文から変化してきたと解されたが、特徴は節(フシ)が早口で軽快になり、冗談を交じえて人を笑わせ、独特の台本もできた。ときに浄瑠璃の一部を口説きにしたものが語られ、台本は古いもので、節だけチョンガレのものもあった。
チョボクレ チョボクレ、チョンガレ チョンガレのはやし言葉も入るが、その発声法は「へばり声」と言われて、祭文も、チョンガレも、浪花節も同じとされている。また浪花節の節廻しは義太夫、祭文、歌舞伎の声色にも取り入れられ、近畿地方の盆踊り「江州音頭」にも取り入れられた。
そして小島願人でのちょぼくれでは阿呆陀羅経が唄われる。
阿呆陀羅経とは 願人坊主が時事風刺や言葉遊びなどを早口に節を付けて口上する俗謡であり、「阿弥陀経」をもじった経文まがいの文句を小さな二つの木魚をたたいて拍子を取りながらうたって、銭を乞い歩いたというものである。
後に早物語などに変化し、田植え踊り等の中入り口上にも使われるようになる。
チョボクレの舞手は保存会の小林さんです。台本をもとに日々研究しているそうです。
小島願人では木魚の代わりに両手に四ツ竹を持って踊りながら阿呆陀羅経を叫ぶ。
(以下に文句を掲載するが、動画からの書き起こしなので間違いがありましたらご指摘願います)
エー恐れながら、勿体ながら、そろそろ繰り出すお経の文句。
何は何と申したならば、
今の世の中、四方逆様で石が流れて木の葉が沈む。
嫁が姑で姑が嫁だ くるりしぶくれて背中にデベソ
ハェー ワンつぐ 吠えつぐ 喰らいつぐ
喰らいつきなら傷がつぐく 傷が付いたら痛みつぐ
痛みついだら医者がつぐ 医者がついだら薬つぐ
薬ついだら治りつぐ 治りついだら跡がつぐ
エーおよそ世の中 赤いものだらけ
****国の花 ****平家の赤い花
あの蔵の看板 女郎屋の看板 これも赤い
赤いものだらけはまだまだある
猿のけっつに 牡丹の花 これも赤い
尚、囃子方の合いの手は「スチャラカポコポコ」であり、これもチョンガレの系譜を感じさせる。
いずれ、東北地方における願人踊りの伝承は秋田・山形に数例と宮城ではここだけ(現存するもの)という非常に希少な芸能となってしまった。
わけてもチョボクレなどというものは滅多にお目にかかれない。
胆沢の南都田郷土史には戦前までチョボクレがあったと記述されているが現在はないと思います。
このような大道芸に類するものは門付の際に米銭を乞うため「物乞い」として貶められいたためか、戦後は教育的に良くないとされてきた風潮があったため、尚更衰退が著しく、もはやその芸態を知るものさえ少ないため復活も覚束ない。
だから、せめて現存しているものを大切に残して行かなければと思います。
小島願人踊りは登米市の指定無形文化財となっていて、行政機関からも理解されているため保存されていくと思います。賢明な判断に敬意を表するとともに他の市町村も見習ってほしい、俗謡といえど江戸時代に遡れるようなものは大切に保護していただきたい。
「ちょぼくれの研究」というものがネット上で読めるので、ご興味のある方はご一読を。
⇒小林直弥(日本芸能・舞踊史)著 ”ちょぼくれの研究”
動画でどうぞ。
