おためし行事 (筒粥占い) 後半
昨日に引き続き一関市藤沢町の白澤神社に伝わる筒粥神事の様子を書きます。
炊き上がった粥鍋を下げた氏子一同は真っ暗な山道を宮司宅へと戻ってくる。
神棚を祀った広間にて「オタメシ」が始まる。この日の参加者は氏子と西口集落の方たち10人程であった。
鍋の中には炊き上がった粥の間に19本の一寸ほどに切った竹筒が紛れている。
これを慎重に鍋から取り出す。
すると、審判係のものに竹筒が手渡され、筒の中の米粒の数を数えて皆に発表する。
審判係から竹筒を受け取った別の係がそれぞれの竹筒を所定の場所に並べ、過不足なく読み上げたか見守る。
占う竹筒は「日、雨、風、早生・中手・晩稲、大麦、小麦、大豆、小豆、粟、大根、蕎麦、稗、胡麻、蚕、煙草、桑、麻」となっている。
後に託宣をする宮司さんが所定の用紙に米粒の数を記入していく。
例えば大麦の竹筒に1粒であれば「一」と記入する。下の「ト」の字は「分」
の字なそうで、「一分」となり不作気味という占いになる。(11粒の場合は1となるということだ)
かくて、全ての竹筒が取り上げられると、いよいよ宮司さんの託宣となる。
皆居ずまいを正して聞き入る。
「結果は、天候に関するオタメシは、日が5、雨が2、風が3で日照はほどほどであるが雨は少し少なく風は良好。稲作は、早生が2、中手が1、晩稲が1、大麦1、小麦1と今年は今までにないくらい一の結果が多く作柄が心配される。また、大豆4、小豆1、粟1、大根1、蕎麦1、稗2、胡麻1、蚕1、煙草4、桑4、麻6である。
一が多いが十一になったものが多かったので余り心配はないが、セーヤレセーヤレの精神を忘れずに一生懸命励めばよい結果もあるだろう」
という趣旨のことでした。
たとえ十の結果が出ても怠けて暮らせば一の作になるから心して一年くらすようにとの戒めもありました。
その後は直会となり、一同酒食を共にしながら占いのことや、今年の農事のこと、集落のことなど和やかに話し合いました。(私もお相伴して丼でけんちん汁をいただいた)
小野宮司さんの話では、昔はオタメシには沢山の人が見物に集まり、また若い男女の出会いの場(嫁探し)でもあったそうだ。
今は戸数も少なくなり、参加する氏子たちも兼業農家で勤務の関係もあるので、ゆくゆくは開催日を7日ではなく直近の日曜日にしようかと考えているそうだ。
この時期には餅占いや炭占い等様々な農事に関する占いごとがあるが、米を使って占うことの意義を考えさせられた。正月に来訪する歳徳神は米の神でもある。したがって、米一粒そのものに神が宿り、神聖な力があるのだと昔の人達は思ったのであろう。それゆえ、人間に対して米粒でもって作柄を告げるのは尊い神意なのだと畏敬の念をもって信じられてきたのだと思う。
是非とも無くしたくない民俗行事である。行政も保存に力を貸してほしいものだ。
動画でどうぞ。
