暮坪虎舞
釜石祭りで併催された虎舞フェスティバル2012から、遠野市上郷町暮坪地区に伝承される虎舞を取り上げます。
遠野市にはこの暮坪虎舞(平成22年復活)と赤羽根虎舞(休止中)がありますが、気仙地方からの伝承経路が察しられます。
由来については、当日の代表の方の解説と遠野市の広報から
上郷暮坪地区に鎮座する熊野神社(江戸初期開基)の板に草筵を被って踊っているものが描かれてあり、さらに木(竹)で威嚇している者も描いている。これが虎舞を表しているのかどうか確証はないが、そうだとしたら江戸初期のものではないか。
はっきりしているのは、日清戦争の頃に暮坪地区出身の朝橋長松さんが中国の戦地で習い覚えたものを伝承したのが始まりだということです。
その後、堀切留吉さんが改良を加えて現在の形になった。
少子化などの影響で近年は活動が途絶えていましたが、2010年4月、同町第5区長に就任された佐々木善次郎さんが前区長より「何とか虎舞を復活させてほしい」と引き継ぎを受け、2010年6月に保存会を再結成して伝承している。
演目は入端、引端、刺し端、梯子乗りである。
お囃子は大小の締太鼓に笛と何故かトタンを叩いて調子をつけています。

舞の構成は小踊り、槍つき(和藤内)、ささらすり(サイボウ)、虎となっている。
小踊りは獅子あやしというより、遠野の鹿踊の小踊りの所作である。

ここの虎舞の梯子は気仙地区の傾斜梯子と違って直立である。
直立した梯子は根元で数人と四方のロープを一人ずつが引っ張って支える。
よくよく考えると、気仙地区の巨大化した梯子では移動するもの大変だが、ここの短い梯子であれば門付けも容易にできるという利点があるのかと推察できる。

この梯子乗りでは虎よりもササラスリの方が主役となっている。
気仙地区のものでもサイボウがアクロバティックな梯子乗りをするわけだが、暮坪では梯子が短い分だけ虎の出番が少ない。
観客も虎よりもササラスリの技に喝采を送っていたほどである。

終盤は和藤内が虎を鎮めて終わる。
伝承経路はともかくとして、いろいろな要素が入り混じった興味深い虎舞ではある。
ぜひ続けて欲しい。

動画でどうぞ。
