上町法印神楽 魔王
さて、今日は上町法印神楽の魔王を。
この演目は、先に本吉代々法印神楽でもそうであったが、小悪魔どもが主役の素戔嗚尊をさしおいて笑いを誘いながら暴れまくる人気の演目である。
と、その前に、この演目では最初にツケが登場する。
ツケとは冒頭で登場する説明役で本田安次が「宮城県の神楽と舞踊」の中で「斎部秘伝神楽本紀」から引いて次のように説明している
各曲には「祝詞(のっと)」という唱え事があり、最初に皇大神と中央に記した赤幣を持ったものが出て、一舞の後この「祝詞」を唱えたものらしい。これはそれぞれの舞のいわれを語ったもので、これが済んでその者が入ると舞人が出て、夫々の舞を舞う。
法印神楽の舞の様式もこれと全く同じである。右にいう赤幣を持った者を法印神楽ではツケと称し「祝詞」を「神諷(かんなぎ)」と呼んでいる・・・
と。ここの法印神楽ではツケは白面の翁の姿である。
余談であるが、毛越寺の延年には「祝詞(のっと)」という演目があり、台詞を口中でつぶやくように唱え摩多羅神の本地と御利益を説明風に語るというものがある。
さて、さればでござる。
ツケが喋り終わるやいなやバタバタと登場するのが小悪魔たちである。本田本では魔民共と表記されている。
神楽が始まる前に下の写真の真ん中の少年神楽師に今日は何の役をするのかと聞いたら「魔王の道化」と答えた。
とても楽しそうだった。確かに楽しそうに道化を演じきっていた。大拍手である。

この演目は子供たちにも人気があるらしく、この演目の頃にはたくさん集まってきていた。

それもそのはず、道化どもが樽一杯の餅を撒くのだ。
子供たちばかりでなく老若男女が福をさずかろうと殺到した。(動画でご確認ください)
この餅まきは、神楽衆からのご祝儀の意味もあるところだが、豊穣予祝のいわゆる散米(爪米)の意味もあるのではと思う。

で、大暴れした道化どもはそれぞれが三尺ほどの竹を持ち、輪になって刀潜りのように飛んだり潜ったりをする。
刀潜りの所作は、この周辺の神楽では三宝荒神で行われ山伏神楽では勢剣、剣舞では三人怒物(加護)等で同様に行われる。

等などして我が物顔で暴れていたが、いつの間にか素戔嗚尊が現れてびっくりする。
ツケが魔物を退治してくれと頼むと素戔嗚尊がそれでは私が退治しましょうと
「装束を改め、神はかりに議り申さんやのう!」と一喝して道化どもとの可笑しな闘いが始まる。

めでたく、道化どもが退散した後に素戔嗚尊の勝利の太刀御神楽があり幕入りとなる。

昼神楽はここまでで終わり、中入りになりました。
動画でどうぞ。
