本吉太々法印神楽 日本武
今日は陸前高田市の月山神社秋季例祭 本吉太々法印神楽奉納リポートの最後を飾る日本武(ヤマトタケル)です。
この前の西の宮の途中で雨が激しく降ってきたので急遽参集殿で神楽を行うことになりましたが、大変立派な参集殿で、いい雰囲気で神楽鑑賞ができました。
この演目は副題に悪鬼退治とありますが、南部神楽では宝剣取り等でお馴染みの演目。
素戔嗚尊が八岐大蛇から得た戦利品の天叢雲剣を熱田神宮に奉納し、それを悪鬼が磐長姫に姿を変えて略取した。
そして後に日本武尊がその宝剣を奪い返すというストーリーです。
最初に姫が登場します。出がかりは
~森遠く 譬え山路を隔つとも 思いを残せ我もしのぶに・・・
型本では右手に扇、左手に手草(榊)とありますが左手には鉾を持ってこの後の騒動を予感させます
第一段階(?)の磐長姫変化です。
半人半鬼といったところでしょうか。
まだ鬼になりきれない・・・というより鬼から覚醒できないでいる怨霊の姿というべきか
~自らは実の磐長姫にあらず、八重の莊に住まう悪鬼なり、かの宝剣を奪い取り尊へ仇をなさんためかく化現せり
と叫び宝剣を奪い取ります
そこへ、日本武尊があらわれ宝剣を奪い返す次第を述べる
尊に呼び出されて、第二段階(?)に変化した悪鬼が登場します。
他の神楽では一度の変化しかありませんが、ここの神楽では二度変化します。
これが本吉太々法印神楽の大きな特徴と言えます。
こうすることによって悪鬼の心根の変遷(苦悩)がよく解る仕掛けになっていると思います。
とここで両者の戦いになります。
型本では
~とど尊も鉾を捨てて太刀を抜き、色々振りあって戦う
とあります。色々戦います。場内は驚嘆と爆笑です。
ついには尊が勝利し、二本の太刀をもって太刀みかぐらで舞納めます。
今回は念願叶って気仙地方に伝わる稀な法印神楽を見ることが出来ました。残念ながら人が揃わずに省略した演目等があったので今後も追っかけを続けたいと思います。
それにしてもこの法印神楽は謎の部分が多く今後の考証の余地が多々あるように思われます。(三輪流のような本海流のような)
そして終わりになりましたが、この月山神社は3.11の大津波の際には下の長部集落が壊滅したため避難所になり、社務所では3ヶ月に渡って百数十名が身を寄せたということです。
この日も直近の仮設住宅から年配の方々が神楽を見に来ていて、「しばらくぶりで神楽見だっちゃ」と大喜びでした。こうした毎年の恒例行事が普通にできる平穏な日々がありがたく思えた一時でもありました。
動画でどうぞ。
