江刺玉里の念仏講
これは平成18年3月7日に採録した行事である。
奥州市江刺区玉里の知人宅で念仏講をやると聞き是非見せてくださいと言ったらお招きいただいたので訪問したしだいである。
夕刻に知人宅を訪れると既に客間に祭壇が設えてあり、経机の上には祭文と燭台、水、塩、そして折敷の上に五合餅を供えてある。
導師役が叩く神楽太鼓のまわりに念仏の大数珠が回され講員の座席に座布団が用意されてある。
太鼓には念仏が印されてある。
午後6時頃になると各々集い来て縁側に用意された手鉢で手を清める。
念仏の数珠回しはいわゆる百万遍のとおりで、太鼓の拍子に合わせて数珠を時計回りに回し、大玉が回ってくるたびに数珠を奉じて一礼する。
これを三周ほどまわして念仏は終了する。
その後、祭壇は片付けられて直会となる。
直会なので、酒を酌み交わしての共食となるのだが、普通の直会と異なるのは祭壇にもあった五号餅である。
これが、一人一人の前に膳に盛られている。
単にきな粉をまぶしただけの餅であるが、昔はこれを無言で一気呵成に平らげなければ精進したことにならなかったそうである。
決まりごとなので、みなさんちぎりながら一生懸命ほうばっていましたが「むがしは食えだけっと、今だは半分もいげるがどうが・・・」と青息吐息である。
それにしても、これが戦前から続いていたということであるから、神事といえど一人五合ずつの餅を供することができたということは、この地方が実り豊かな田園地帯であったということの証左といえる。
このような講も、この年代の方々がいなくなったら消滅するのではと危惧される。
講=地域コミュニティの存続をどのように繋げるか、それが日本の基底のような気もするが。
動画でどうぞ。(デジカメの動画モードなので画質音質ともに最悪です)
