雪の小正月
これは、一関市厳美町の市役所厳美出張所の隣に移築された古民家です。
いわての文化情報大辞典より抜粋すると。
旧鈴木家住宅は、もと一関市舞川字折の口にあったものを一関市が寄贈を受け、昭和54年に現在地に移築し、創建当初に近い形に復元したものである。
中型規模の民家で、壁の多い閉鎖的な家構えであるとともに、うしもち柱等孤立柱による素朴な架構を示している。
開口部の敷居溝、鴨居溝をそれぞれ3本溝とし、栗の柱はすべて手斧削りで、主要な柱の断面は長方形となる。
旧仙台藩領北部地方の古民家に広くみられる食い違い四間取り型民家形式の中で、原型に近い形を残しており、県下民家建築史を知る上で貴重である。
建築年代は18世紀中期を降らないものと推定されている。
家のまえにあるのは粟穂稗穂(きんこまんこならす)であるが、このことについて「岩手の小正月行事調査報告書」厳美地区千葉某談より
1月13日に「キンコ」を作るカツの木とキンコをならす栗の木を迎えてくる。カツの木は誰の山の木を切ってもよいものとされいる。カツの木の細い部分を削って花(削り花)を作る。
1月14日午後、カツの木を八寸ほどに切り皮をむく。百本ほど準備する。
1月15日朝(風の立たないうち)栗の木にキンコと花をならす。花は上の方に咲かす。ならしおわると家の中間の前の庭先に立てる。(家の中間のに神棚あり、この正面とする)
また、門松、水瓶、臼等に飾っていrた注連縄をはずし、結びあわせて長くし、キンコの栗の木から縁側の柱に張り結ぶ。
この注連縄の中間にカツの木を二尺ほどに切り、上の方に一箇所削り花をつけたものを挟む。これは地蔵様たちが持っている「錫杖」を象ったもので、錫杖の法力で悪魔が来ないようにとの呪いだという。
下の写真は同じく厳美の上野地区で見かけたもの。
お作立てもしたらしい。
家の前の畑で雪を踏んで田型を作り藁を田植えしたように植える。種類は小豆から、豆から、胡麻から、粟穂、稗穂、茄子、南蛮であったという。
また、この日の夕方には子供たちがキンコを二本持ってカタカタと叩きながら近隣の家を巡り「メアッタ、メアッタ、カセドリメアッタ」と唱える。
カセドリの来た家では「ご苦労様」といってお盆に切り餅を二三個のせて与える。
また、カセドリは鳥追いの行事で、お作立ての加勢人(かせっと)だという。
他に小正月行事としては、成木責めがある。
東磐井の方だったと思うが、成木責めをする際にまさかりを持った者と大根なますを持った者が木の前後に立ち、まさかりで「今年は成るか成らぬか」と責め立てると、大根なますを持った者が「なんます、なんます(成ります、成ります)」と答えるという。
おおらかであはるが、作占に込められた切実な願いが偲ばれる。
今年も良作でありますように。
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