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2020.06.14 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ関連書籍

南部藩修験惣録「自光坊の歴史」を読む

さて本日は研究書籍についてです。

盛岡市教育委員会が令和二年三月三十一日に発刊した「自光坊の歴史」ですが、盛岡市歴史文化館で頒布しているというので昨日出かけて入手しました。

この資料は、一方井家所蔵自光坊修験関係資料が盛岡市指定文化財に指定されたことに伴い、その資料の概観と重要性を示すために盛岡市教育委員会がまとめたもので、江戸初期から明治の修験廃止令までの経緯を集約していて読みやすい。



この自光坊という修験は、代々南部藩の年行事の惣録として藩内の修験者の差配をおこなってきた。
仔細は盛岡市HPの記載を参照してください。 ⇒一方井家所蔵自光坊修験関係資料が盛岡市指定文化財に指定されました

この自光坊は数多の聖教に関わる文書を集め、その中には祈祷に関するものも多くあった。つまり、所願祈祷する際の祭式とともに、神楽の修し方も定めている。

自光坊が直接関わったと思われる神明社の神楽を始め、成善院の大ケ生神楽、大教坊の見前神楽、明学坊の薮川神楽。
そして一戸の吉祥院配下の山伏が行う神楽について多大な影響力を誇ったことが伺われる。

それにしても室町期から江戸末期までの修験の様相は煩瑣である。
本山派、当山派それに羽黒派が入り乱れての相克パワーバランスの時代である。
そういった状況下で里修験たちが、霞や旦那場の農民たちの心を捉えて呪符の代価を多く得るためにいかに腐心したか、そういったこともこの調査書から伺うことができる。

2020.06.14 |

2019.01.25 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ関連書籍

本田安次が見た芸能2 大付内の神楽

さて本日は続き物で、本田安次が見た芸能2大付内の神楽です。

「旅と伝説」に寄稿した岩手の旅では冒頭に早池峰へと題して早池峰神楽を探訪した経過が記されている。
盆の16日に石鳥谷駅を降りて乗り合いバスに揺られて早池峰山中腹の岳集落に着き早池峰祭を詳しく調べ、神楽も古老から話を聞くなどしたとある。


下記画像は2006年8月1日の早池峰神社例大祭にて撮影



ここで本田安次は祭り見物の傍らで岳神楽の古老や神社の神職より資料を借り受けて記録したことが記されている。
それが後に「山伏神楽・番楽」に代表される数々の民俗芸能書籍にと著されることになる。

P1090546_20190125205701937.jpg

さて、この寄稿文の中で大付内の神楽については以下のように詳述している

「(前略)翌十九日、早朝、岳をたって日盛りを大付內に向ふ。
岳は五拍子、此處のは七拍子と稱し,舞にも若干の相違があるといふ。此処も戸数十五軒程の山澤の部落で山伏の後らしい。
長享11年(西紀一四八八)に、京都加茂神社に神樂を奉納し、 資格をとったといふ記錄ある由。
,式舞表裏に、既に岳とは少少の出入があった。
テクストは人に貸して、返されないでゐるといふ。
今、部落の人が、冬期の副業に、木彫の神樂人形の製作を思ひ立つてゐる。
縣廳の美術學校出の某氏も大へん是に賛成し、スケッチを申出られてゐる。
或はそのうち特に、大迫の小學校など拜借して,實演の會を催すかも知れないと いふ。
訪ねて行った庭元の佐々木氏は、大迫の小學校に出て居られる方である,今のうちに殘つてゐる曲の全部を整理し、どうにか記錄にまとめてみたいと申出ると、快く諾つてくれられた。
實演と相俟って、出來るだけ精しいト書をテクストに附してみたい。岳との異同も明にしてみたい。」

こうして本田安次が山伏神楽の世界に分け入ったことがこの一章でよく理解できる。

スナップショット 1 (2019-01-25 20-28)

動画でどうぞ

テーマ:伝統芸能 - ジャンル:学問・文化・芸術

2019.01.25 |

2019.01.24 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ関連書籍

本田安次が見た芸能 その1「風流神楽」

さて本日は、これまたひょんなことから入手した岩崎美術社刊の「旅と伝説」から」取り上げてみます。
この旅と伝説には日本各地の風光明媚な観光名所の紹介から、各地の伝説や伝承芸能などについて様々な書き手が取材をした見聞記等を掲載した大鑑です。

ということで、昭和6年10月発行の中から本田安次寄稿の「岩手の旅」をもとに本田安次が見た芸能と題して書いてみます。

20190124_211336300.jpg

本田安次は石巻中学教諭時代に浜の法印神楽を見聞きしていたが、ある日仙台の神社で南部神楽の上演に巡り会い、その舞の手の細やかさに驚いて岩手県の神楽調査に踏み出してついには早池峰神楽を発見したというエピソードが有名です。

その際の南部神楽は福原神楽(現奥州市水沢)だったということですが、法印神楽と山伏神楽のハイブリッドといえる南部神楽が昭和初頭頃には風流神楽と定義づけられていたことがわかります。

本文中から抜粋してみます。

「朝早く中尊寺へ。大長壽院の菅原氏を訪れ、かねてお願ひしておいた中尊寺能の開口、及び祝詞の詞章の寫本を拜見しようとしたが、人に貸してまだ返ってきてゐなかった。
それより衣川村の川東へ、川東神樂を訪ねたが、所謂風流神樂の支流で、所傅思ふやうでなく、大體をお伺ひして戻る。
(中略)
汽車の都合で,それから徒歩で日盛りを前澤へ。
白鳥神社の吉田氏に会う。
色々話が出て、この神樂の鈴木氏を出先から呼んで下すった。
風流神樂と稱してゐる由。演劇がかった神樂である。
これは嚴美村が中心らしいといふ.これは衣川でもさう言ってゐた。
この夏の旅は、實はこの流の神樂を探すつもりであったのが、思ひがけずも今迄全く別のもののみを見て來た。
吉田氏の御口添もあって,わざわざテクストを取りに行って下さる。
曾て一の關の春、初午の日に、汽車を待つ間町を歩いたところ,風流祭りと稱して、義經の像を飾った山車を引き、辨慶其他の扮裝せるもの,及び踊の一團が家々を めぐり、火伏せの祈禱をし,花笠など持ち踊りまはってゐるのに出逢ったことがある。
又どこかの祭りにも、何かの山車を風流と言ってゐた地方新聞の寫眞を見た記憶がある。

此の神樂の仕組には,義經傳說が主となり、他に田村三代、掃部長者、葛の葉、羽衣等がある。
因に、此の神樂が、所謂歌舞伎と關係あるやうに考へることはどうか。
舞や科は式舞の手が基調になってゐることは明かで、詞章は別に寄りどころあったものと思ふ。
然しながら案外新しい発祥らしい節はある。
テクストを,期限を限って拜借して行く。」

当時南部神楽を風流神楽と称していたのは江戸時代に神事芸能であった法印神楽に対して、それを凌駕するが如く流行しだした新しい神楽という意味で風流としていたと推量される。
それはまた本田安次編著の陸前浜乃法印神楽に南部神楽が収録されていることでも法印神楽を基底に据えながら時代にあった工夫がなされた芸能という捉え方だったのだろう。

ちなみに大正時代に書かれた大原町誌(現一関市大東町大原)の中に法印神楽と南部神楽に関してこういう記述がある。
法印神楽については「従前の修験の業なり、神代の故事に凝せし舞をなす」としながら
水山神楽(南部神楽の一系統)には「その所作野鄙にして滑稽を旨とす。故に唄も猥雑なるもの多し。多くは問答を用い、笛太鼓手拍子にて囃す。この芸人は主に青年輩なり」と。

昭和初期における両神楽の特徴がよく示されている記述だが、次第に法印神楽を駆逐していった様相がまさに「風流」だったのだろう。

ということで、本日の動画は平成20年8月のみちのく芸能まつりより狼志田神楽さんの五條の橋です。「義經傳說」です。



動画でどうぞ

テーマ:伝統芸能 - ジャンル:学問・文化・芸術

2019.01.24 |

2015.04.30 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ関連書籍

とりら8号に南部神楽について書いてみた!

という訳で、本日は書籍の紹介です。

この本(冊子)は盛岡市を中心に活動している「ふるさと岩手の芸能とくらし研究会」が編集発行しているもので、平成19年6月に創刊以来、岩手の郷土芸能と民俗についての詳細なリポートで綴られている。

(詳細はblogとりらを参照ください http://www.h3.dion.ne.jp/~iwagei/toriraindex.htm

その最新号が2015年4月11日に発刊されました。
で、その中に「南部神楽 その謎解きの魅力」と題して、当ブログ管理人が寄稿いたしました。
編集長の飯坂様のお力添えによりまして、神楽素人の私が臆面もなく駄文を書き連ねてしまった訳です。



内容は皮相浅薄なことばかりですが、これも南部神楽を愛し、沢山の人達に広く知ってほしいという願いからのこととお許し願いたいと思います。
そしてこれからも南部神楽の応援隊であり続けようと思います。

2015043022300000.jpg

この冊子のお求めは以下のとおり(ブログとりらより転載)・・・もしくは、このブログのメッセージ欄でもよろしいです。

「とりら」のお求めは・・・
  「とりら」は書店等で販売しますが、ご希望の方には直接お送りします。
●本体価格:1号~5号は500円,6号は1000円 (各 税込)
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「ふるさと岩手の芸能とくらし研究会」事務局
toriratorira@yahoo.co.jp

※現在の取り扱い店(随時配本中)
【盛岡市】
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 レコードショップアポロ

2015.04.30 |

2014.05.29 | Comments(0) | Trackback(0) | カテゴリ関連書籍

太神楽と神楽芝居

本当は山伏系神楽の本を買うつもりで古本サイトでミスオーダーして手に入れた1冊の本。

著者は水戸大神楽の15代家元である柳貴家勝蔵である。
本のタイトルは「日本大神楽事典」・・・「大」の文字がなければなぁ、と思いつつ読み始めたらこれが意外におもしろい。
太神楽というと伊勢神楽から全国へ派生した獅子回しと曲芸だけの芸能と思っていたらさにあらず。



著者によると日本の太神楽は大きくわけると、神事芸能の色濃い伊勢神楽、華やかに風流化した江戸神楽、両者を併せ持った水戸神楽が主流であるという。

文字通り、獅子頭を奉じて悪魔祓いをして門付けをするのが本地であるが、余芸として玉回しや撥回し、曲乗りや籠立てなどの曲芸を発展させ、次第に辻立ちや見世物小屋での演芸と化したものもある。

と、そこまでは私が太神楽に抱いていた、「そういう芸能」だったのだが、この事典にはその他のことも書いてある。

特筆したいのが「神楽芝居」という文字通り獅子回しの間に、まるで「アイの狂言」のように演じられる演目があるのだという。

この本から拾ってみると。

茶番ものがたくさんありますが、歌舞伎などから来ていると思われる演目がたたあるようです。
  石童丸、勧進帳、川中島の合戦、源三位頼政、塩原太助、須磨の浦、忠臣蔵五段目(山崎街道の場) などなど

なんだか、一度現地で見てみたくなりました。

因みに、あしたのジョーの主題歌を歌っていた尾藤イサオは鏡味鉄太郎という名の江戸大神楽師だったそうです。(ちょっとだけトリビア)

2014.05.29 |

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Author:祭りの追っかけ
祭・・・それは祈り、畏れ、そして縋り付くばかりの信仰、神人共生の歓びの象徴。さて、明日のエネルギーの糧を求めに彷徨おう。

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